二胡を練習して分かったこと~度数で音楽理論を学ぶことの利点~

sinya

2018年05月10日 00:08

【sinyaが開発!弾く脳トレ!よなおしギター】


【私が二胡を弾くようになった経緯】


以前、ウチの妻が二胡を始めたという記事を書きました。

【二胡と出会うきっかけはこちら⇒】ギターリストの新しい練習方法~二胡譜の活用~


あれから妻は、地道に頑張ってだいぶ上達し、習い始めてから3ヶ月程度で発表会にも参加させていただきました。これも、周りに二胡に詳しい方が何人もいらっしゃったこと、その方たちがとても親身に妻の指導をして下さったお陰です。

二胡を始めたいと思った時、一番の問題は指導者の不足だと思います。

日本で、演奏はもちろん楽器自体にも精通した先生を探すのは、なかなか難しいでしょう。

妻はとても恵まれていました。感謝です。


さてそうなると、私が二胡に興味を持つのも自然の流れ......

こんな性格ですから、どちらかというと『弾けるようになりたい!』というより『この楽器のことを知りたい!』という探求心からの興味です。

1ヶ月ほど前、たまたま妻の練習に顔を出しましたら、先生方が「一緒にやってみませんか?」みたいなノリになって、2時間ほど基礎を教えていただきました。

以前、妻と一緒に体験をしましたが、本格的に学ぶのはこれが初めてです。

その後、自宅で妻の二胡を借りて練習しておりましたが、二胡は『千斤』というパーツを動かして弦の長さ(弦長)を個々の演奏者に合わせて調節する仕組みになっています。

この『千斤』は、ギターでいうナットです。ここを調節し、演奏者の手の長さに合わせてベストな弦長を決定します。

当然、妻の楽器では私の手の長さに合わないわけです。

そんな私を見かねて、妻がヤフオクで二胡を落札してくれました。

16,000円でした。

私専用の二胡が届いて2週間1日1時間程度の練習をした結果の演奏です。




正直、音程は微妙だし、ロングトーンは出ないし、手首も固いし、ストローク(押し弓、引き弓)もテキトー。なにより、『キーキー』『ギコギコ』と汚い音が出てとても鑑賞に耐えうる演奏ではありません。

ただ、実際に演奏することで、この楽器の構造を理解することができ、それは『度数の持つ力』に驚かされた瞬間でもありました。


【二胡の構造】


二胡はその名の通り2本の弦が張られた楽器です。

低い方が内弦でD(レ)の音、高い方が外弦でA(ラ)の音です。

2つの弦のインターバルは5度ですね。これは、一五一会のチューニング方法と同じパターンです。

ただ二胡は、2つの弦を一緒に鳴らすことはありません。(私の知る限りですが)

つまり、単音でメロディを奏でるのが主な役割の楽器ということですね。

そして、ギターリストが二胡を演奏するときに最も戸惑うのが、フレットがないことでしょう。


【二胡とギターの違い】


二胡にフレットはありません。

これは、西洋で発展したバイオリンなどの擦弦(さつげん)楽器も同じですね。弾き始めは正に『手探り』で音を探していかなくてはなりません。

フレットがあることに慣れている私には、指のほんの少しのズレで音程が変わるこのシビアさは強敵です。

この問題を解決する方法は、練習しかありません。

ただ、フレットの有無に関係なく12平均律による音の分布は当然同じです。

つまり、ギターで慣れ親しんだ『12平均律的運指』はもちろん、そのまま適用できます。

【12平均律についてはこちらも参考にしてください⇒】「押さえる場所が分からない!」を解決~二胡の効率的な練習方法1~


もう1つギターと大きく違うのは、音の出し方です。

二胡は『弓』を使って、弦を擦って(こすって)音を出します。

これがまた難しい!

綺麗な音を出すのが難しいのではなく、そもそも音をまともに出すのが非常に難しいのです。

たいていは、始め『キーキー』や『ギコギコ』といった超音波やノコギリのような音しか出ません。そして、演奏者も周りにいる人間も耳を破壊されます。

ギターのサウンドホールほどの大きさしかないボディからは想像できない大きな音が出る二胡は、周りの人の理解と練習環境の確保にも相当に苦労するでしょう。

ギターも音を出すのが難しい楽器ですが、二胡の音出しの難しさは比べ物になりません。異常です。

恐らく、二胡を独学で始めると多くの人が音すら出せずに挫折してしまうのではないかと思います。


【ギターとの共通点】


先にも少し書きましたが、弦を押さえて音を変えるという仕組みの楽器である以上、12平均律による音の分布はギターも二胡も全く同じです。

例えば、弦を押さえる場所がボディー側に進めば進むほど、半音の幅は狭くなっていきます。ギターのフレットがボディー側に進むと狭くなっていくのと同じですね。

もちろん、メジャースケールを演奏するときの音の並び方も全く一緒です

【メジャースケールの音の並びについてはこちら⇒】Cメジャースケールの構造~全全半全全全半~


【移動ドの考え方】


二胡は『移動ド』の考え方で練習するのが一般的です。

【『固定ド』と『移動ド』って何が違うの?と思った方はこちら⇒】『固定ド』と『移動ド』の違いについて~日本のピアノ学習の失敗~


そして、二胡で最初に練習するのは『D調(KeyD)』のスケールや曲です。

その時『移動ド』の考え方では、『レをド』としてスケールやメロディの練習をします。

その為、レッスンでは『ドレミを弾いてみましょう!』という言い方をしますが、実際には『レ・ミ・#ファ』の音を出すことになります。

これは、内弦(1番低い音の弦)の開放音がD(レ)になっているためD(レ)から始まるメジャースケールが一番弾きやすいからなんです。

さらに、D調で演奏できるようになると、次の段階として『G調(KeyG)』の練習が始まります。

これは、D調の曲を演奏する場合に、主音(第一音)であるD(レ)の音よりも低い音が出せないからです。

童謡や唱歌などのシンプルな曲でもそうですが、主音よりもさらに4度下の音をメロディに使う曲はかなり多いです。つまり、G調にすることで、主音G(ソ)の4度下のD(レ)の音まで出すことができるようになるんですね。

二胡でG調を習うのは、演奏できる曲を増やすためと言ってもいいでしょう。


【移動ドの問題点】


移動ドの考え方は、特に楽器未経験の人には分かりやすい方法です。

ただ、二胡でD調⇒G調と進んでいくと問題になるのが、今までは『D(レ)をド』として考えていたものが、『G(ソ)をド』として考えなければならないことです。

つまり、『ドレミを弾いてみましょう!』と言われたらG調では『ソ・ラ・シ』と弾かなければなりません。D調の時とは出す音も指の動かし方も違ってくるんですね。

もちろんレッスンでは『G調のドレミを弾いてみましょう!』と言えば良いわけですが...

問題は楽譜の表記です。

移動ドで練習を進めていれば、固定ドを基に作られた五線譜は使いにくい。

また音名を『ド・レ・ミ』のように表記した楽譜では、例えばドと書いてある場所は、D調ではD(レ)G調ではG(ソ)を出すことになります。これだと、特に日本の固定ドの考え方で音楽を学んできた楽器経験者は、楽譜と実際の音の違いに違和感を覚え混乱するでしょう。

そして、カタカナだと日本人にしか読めません。

これらの問題を解決するのが、『度数』です。


【度数による楽譜】


二胡の楽譜『二胡譜』は度数により表記されます。

例えば、『きらきら星』はこんな感じです。


確かにこれなら、D調だろうとG調だろうと『1が主音』となり、先のような混乱は軽減できるでしょうし、全世界共通で使えます。

この度数で表記された楽譜は、私が勝手に『度数譜』と名前を付けてギター用の楽譜としてご紹介したものとほぼ同じです。

【私が考えた度数譜はこちら⇒】ギター専用楽譜『度数譜』


【度数の持つ力】


ギターは、(ピアノ経験者以外は)度数を意識して練習するのが理想です。

私のギター教室の生徒さんも、もちろん私も『度数譜』を使って度数を意識して練習をしていますこの練習方法は、スケールやコードの構造を最も理解しやすく、さらにそれを生かし1ランク上の演奏をすることができると確信しています。

先ほどの演奏動画の最初の曲は『ふるさと』ですが、実はG調(KeyG)です。

一般的に二胡では、D調の練習をした後に次の段階としてG調に取り組むことをご説明しました。

G調に進むまでの期間は、もちろん演奏者や指導者によって違いはありますが、数ヶ月から1年ほどかかる場合もあるようです。

妻はピアノ経験者で移動ドの考え方に慣れていませんが、D調は比較的スムーズに進みました。ただ、G調の理解には相当に苦戦しています。

一般的な二胡の指導法や妻の様子を見ていますと、『D調とG調は別のもの』という認識があるように思います。

つまり、『D調よりもG調は難しい』、あるいは『D調の曲ができてもG調の曲はまた始めから音の並びを覚えなければならない』という感じです。

なぜそういった認識になるかというと、度数で音楽理論を考えることに慣れていないからということが言えます。

再三お伝えしているように、度数はスケールやコードの構造をもっとも簡単に理解できるツールです。

『度数』で理論を考えることが出来ると、キイ(調)が変わってもその考え方を変える必要が一切ありません。

つまり私は、二胡でG調を演奏するときに新たに音の並びを覚える必要がないわけです。

D調の曲もG調の曲も難易度が同じということですね。

これは、D調G調に限りません。恐らく、2本の弦の開放の音である『レとラ』に#か♭が付くまでのキイは、どれも同じような難易度で演奏できると思います。

つまり、長調(メジャーキイ)でいえば、C調、G調、D調、A調、F調、B♭調、は同じような難易度ということになります。

開放の音に#か♭が付き始めると多少は混乱するかもしれませんが、それでも『度数』を意識することで意識しない場合と比べて格段に理解しやすいと思います。

【#♭の付き方とキイの関係はこちら⇒】この曲のキイは何か?~楽譜を見て瞬時にキイを解析する方法~


【やっとまとめ】


『度数譜』でのギター練習により、度数で音楽理論を考える癖の付いた私は、二胡の音楽的な構造もすぐに理解できました。

二胡を演奏し始めた途端『パ~』っと頭にその構造がインプットされた感じです。

『度数は理論の構造を理解するための最強ツールである』

二胡を演奏することで再確認することが出来ました。


だたし!構造を理解できることと、演奏が上手なこととは全く別です。

私は、二胡は一生をかけても綺麗な音で演奏できる自信がありません...


【おすすめ二胡教本】

二胡を始める場合、絶対に良い先生に習うべきですが、やはり日本で良い先生に巡り合う確率はそう高くないと思います。どうしても独学でやらざるを得ない場合は、このようなDVD付きで基礎から丁寧に解説されている教則本を使いましょう。

妻がこの教則本を先生よりお借りしました。私も内容を確認し、その非常に丁寧な作りに感心し、以来この教則本のみで練習しています。



王霄峰(ワンシャオフォン)の二胡演奏法~初級編~ [教則DVD付き]


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☆『移動ド』についてはよなおしギターブログのこちらの記事も参考にしてください
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